人材紹介業界に感じた
違和感に、挑む。
宮本剛獅(ミヤモトツヨシ)さん 56歳
株式会社人材コンサルティング&カンパニー CEO
元プロテニスプレーヤー
人材紹介業界に感じた違和感に、挑む。
株式会社人材コンサルティング
&カンパニー
CEO 宮本剛獅さん
福岡出身。25歳までプロテニスプレイヤーとして活躍。引退後は金融の世界へ。当時上司から「キミみたいな素人が務まるの?辞めたきゃ辞めていいよ。」と鮮烈な一言を放たれるも、かえって奮起。結果として、モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスの両社でトップセールスとなる。その後、マネーブローカーの再生を4社成功。現在の株式会社人材コンサルティング&カンパニーを立ち上げ、これまで経験のなかった人材紹介ビジネスを開始。なぜ「外資系投資銀行の最大手トップセールス」から「人材紹介会社の立ち上げ」に至ったのか?そして「人材紹介業界で感じた違和感」にどう挑んでいるのか?について編集部が切り込んだ。
外資系金融TOPセールスから
人材紹介業界へ
–金融業界を辞めたきっかけとは?
元々金融業界、外資の投資銀行にいたんですよ。そこで20年やって感じたのは、「本当に意味あるの?」っていうのがあって。あんまり面白くなかったんですよ。いや、仕事は面白いですよ?エキサイティングだし、年収も億を超えるようになり、当時自分はめちゃめちゃくちゃ楽しかった。でも人は喜ばないから、このままこれやってて、死ぬ時になんか面白くなさそうって思ったんですよね。というのも金融を始める前、プロテニスプレイヤーとして活動していて、自分が勝つと「周りが喜ぶ」じゃないですか。家族や友達、学校もみんな。金融関係で僕が稼ぐと、誰も喜ばない。なんかそこに面白さを感じなかったんです。やっぱり「世の中のため」に、ちょっとなんかやろうよ!みたいなね。そういうのもあって、金融辞めたんです。
–なぜ未経験だった人材紹介業界へ?
「人が喜ぶこと」を仕事にしようと思ったんですよ。人材紹介はクライアントも求職者もめっちゃ喜ぶ。それが何より嬉しい。人が喜ぶのが楽しい。応援してくれる人が喜ぶ、誰かが喜ぶってことが、僕の人生のコンセプトなんですよね。人材業界の”じ”の字も知らないし、全く独自で始まったんです。そこで日本の現状を見てみると、「不幸せそうに働いている人が多いな」って感じたんです。そもそもその根源がどこにあるかって、日本の人材採用のやり方に問題があると考えていて。これまで日本の人材紹介会社の多くは、転職市場を業界と業種のマトリックスで分けてきたんです。いわゆるジョブ型のマッチング。そうすると会社に入ってみたら、全然違うことやらされるみたいな状態になるんですよね。そこを変えたくて。「働く」ってことと、「幸せ」ってことをもっと直結できるようなやり方をやりましょうよってことで、そんな背景から人材業界でやろうと思いました。
人材紹介業界に感じた「違和感」
–人材紹介業界に感じた「違和感」とは?
人材紹介業界で働いている人たちの多くは、”人のために”という気持ちで取り組んでる。それなのに毎月の数字に追われていて、求職者のことを本気で考えられてないでしょ!ってケースがある。入社後の求職者の活躍が目的なのに、成約が目的になってるとか。。。会社・組織の観点でいえば朝早くから夜遅くまでの残業ありきの仕事が常態化してるわけですよ。おかしいでしょって違和感を感じました。それって「幸せなんですか?」って。そういうごく当たり前の矛盾に対して、「おかしいでしょ!」って提言したいんです。だって、僕たち「人」は「幸せ(目的)になるために働く(手段)」わけですよ。人材コンサルタントは特に「人の幸せを助ける仕事」なので、まず人材コンサルタント「自身が幸せ」にならないと始まらないでしょって思うんです。これは人材紹介サービスの前提だと考えます。そういう「当たり前のことをやってる会社」がこの業界少ない…全然「ホンネベースじゃない」…そんな違和感をこの人材紹介業界に感じたんです。
–「ホンネベースじゃない」とは?
本当のことを、ほとんど誰も言っていない、そして言える環境が少ないという事です。ホンネを言えず自分自身をごまかしていたり、求職者と人材コンサルタント間で遠慮があったり、同じ事が対クライアントでも起こっていたり、とそういう事です。求職者とホンネで話し、深い相談をする、そういう場所が少なすぎる。「ホンネベースで話せる環境」や「真実を見極める環境」を作らないと、求職者は話しづらいし、話さない、良い気づきも得られない、そしていいマッチングなんかできない。それから、感情だけではなく、どんな求職者だから、どんな質問をするのか、何を聞くのか、しっかり考えて構造化してコミュニケーションしないと。そこがズレちゃうと、人は心にフタをしてしまいますよね。数あるサービスの中で一番ホンネが必要なサービスなのに「ホンネベースじゃない」という違和感がありました。
人材紹介業界に感じた
「違和感」に挑む
–「違和感」へ挑む。どのように?
まずうちが「人材紹介会社のあるべき姿(且つ社会のモデルになるような会社)」を作ろう、という事で挑んでます。会社はホンネベースを軸としています。規則はほぼ無いんです。就業時間や休みの細かいルールはありません、仲間はいるけれど上司はいません。給料も会社が潰れるギリギリまで、圧倒的に高くしました。会社にお金はいらないよねっていう発想です。元々お金が欲しくて始めたビジネスではないので。会社はそんな儲かんなくていいよと。僕自身がこれまで楽しく生活してきたんで、今度は会社の仲間に「みんな若いから遊んで欲しい!もっと好きなものを食べて欲しい!そのためにいい仕事して報酬もいっぱい出すから、楽しく働いて、みんなで幸せになろうよ!」って私のホンネを会社に反映してます。こんな感じで一定の規則の中で、各個人が自由に意思決定するスタイルなんです。まぁ自由と言っても「会社で大事にしている3つ」は必ず守ってもらってますが。
–会社で大事にしている3つ、とは?
うちのコーポレートアイデンティティー、「1.カジュアル、2.プロフェッショナル、3.ラブ」の事です。この3つが当社で大事にしていることで必ず守って貰ってます。それと会社のスローガンとして、「明るく、楽しく、ラクして、ガッツリ稼ごう。」って掲げてます(笑)ここで言うラクしてっていうのは「手を抜いて」じゃなくて、「効率的に」ってこと。苦手なことはやらない、という方針です。得意・不得意は誰でもあるし、何だってできるスーパーマンじゃないんでね。シンプルにしっかり働いて、みんなが幸せになろうってホンネです。
–スローガンにしっかりホンネが反映されてるんですね!
そうなんです。そもそも楽しくなきゃ意味ないんで、楽しめることは何でもやります。面白そうなことだったら、何でもいいんじゃないの?って思ってるんです。僕らが存在している意味というのは、ハッピーになる事や、面白いってところが1番ですから。ハッピーでホンネの組織や人だからこそ、求職者にいいマッチングができ、仕事が決まって、心から良かったねって、クライアントの人もハッピーで、三方よし!というのがあるべき人材紹介会社なんだと思います。
–どうしたらホンネを反映できるのか?
人生の目的って、働くことじゃないですよね。「人生の目的って、幸せになること」だと思うんです。もちろん幸せの定義は人によって違いますが、これは多くの人々のホンネだと思います。そこからスタートする事でホンネを反映する事ができるのかと思います。みんな正直に生きましょうよって。
–宮本さんのような会社が増えるといいですね!
そう思ってます。社会のモデルになるような会社にしていきます。でも「うちの会社には従業員が3人しかいないけど、こんなことやってます!」って言っても、誰も耳を貸さないでしょ?なので、会社をちょっと大きくしようかなって、動いています。こんな感じで人材紹介業界に感じた違和感へ挑んでいます。
挑んだ先にあるもの
–違和感に挑み、イメージ通りに?
いいマッチングがたくさん生まれています(笑)。やっぱり「第2の故郷(ふるさと)」っていうか、「信頼できる場」を僕らは作りたいってあらためて実感しています。「なんかあったら相談できる寺子屋みたいな存在」ですかね。というのも東京って世知辛いし、何を信じたらいいのかわからないじゃないですか。転職となると、どの情報を信じていいのか分からない…だからそういう人たちに対して、何が本当で、何が大事かを伝えたい。そういう気持ちがさらに強くなりました。
–さらに今後の目標は?
数年後の目標、などの具体的なプランはないです。やりたいことはたくさんありますが…例えば、ヒマラヤにイエティの写真を撮りに行きたい!(笑)、とか。夢があるじゃないですか。ヒマラヤの5,000メートルの息もできないところで、イエティが何食べてるのか、とか知りたいんです。妄想ですけどね。ビジネスにおいては、数年後はどうなってるか分かんないから、だったら目の前の人の為に、愚直に一生懸命にやっていきたいですね!目標というか目的でしょうか、、、人が喜ぶ事を仕事にして、皆が幸せになるように引き続き、活動していきます!
リーダパーソン編集部あとがき
南青山のオシャレなエリア。キッチンがあり、調理もできる。夜はちょっとした社交の場へ様変わり。オフィスへの気配りも忘れません。宮本さんのオフィスは社員のみなさんが楽しく仕事ができるような素敵なオフィス。「人を喜ばせる」ことに情熱をもやし、ホンネで生き、物事の「本質」をつき、体現している。人材紹介業界の違和感に自らの会社で挑み、「形にしている」ことに納得し、共感しました。同じ人材紹介会社でも、その会社の思い、考え方、代表者の情熱によって、ここまで違いがあるのだと、実感しました。お金のあるところに人が集まる時代から、信頼のあるところに人が集まる時代となっている昨今、宮本さんの取り組みは一つのビジネスモデルとして確立し、様々な領域でアナロジーが効くのではないでしょうか。人材紹介業界に生きるものとして、また、一人の人間としても、宮本さんの取り組みを純粋に応援します。
※インタビュー&撮影:2019年6月19日